わらしべ会とは

法人理念

 私たちは、20年余の歴史の中で、子どもたちや親たちからいろいろなことを学んできました。その中で「みんなに共通だな」と思えることを、わらしべの里の法人の理念としています。普段は口にしなくても、何かの時に「やっぱりこれは大事だな」と思ってもらうことが一番大切なことです。前面に掲げるのではなく、ふつふつと心に湧いてくること。それが理念であり、その中に真理が隠れていると考えています。
 100%成功の子育てはありません。でも、子どもたちの悲しみ・苦しみを受け取る努力を忘れた社会は0%の子育て(子どもの死)を助長します。どの子も「人生を精いっぱい生きている」。その日々の証に共感してくれる友達(横)・親(縦)・地域(斜め)の関係を太くするために、大人である私たちは、毎日をせっせと送っていきたいと思います。
 最初は「うちの子には関係ない」と思うかもしれません。でも、わらしべという中で、大人も子どもも楽しんで過ごしているうちに、自然に自分の器の小ささを感じてきます。それは感性が豊かになった証拠です。そうなってきたら、自分の子も他の子もみんな一緒だと気付くはずです。わらしべの求める「楽しさ」が奥深く感じてくる瞬間です。

1.大人も子どもも一人ぼっちをつくらない

 わらしべは、どこの保育園にも入れなかったしょうがいを持つ子たちから出発しました。その後、長時間保育の必要な子、他園や学校での生活に悩んでいる子、家族関係に悩んでいる子、子どもを愛せない親、子ども時代が辛かった親、重い病気で悩んでいる親、子育てに悩んでいる親など、子どもも親も「辛くても一人じゃない」ということを発信しつづけてきました。「困ったときはわらしべがある」は仲間がいるということです。

2.大人も子どもも全員が主人公

 無認可の保育園から始まったわらしべは、自分たちで経営から運営までやらなくてはならないという苦労があります。それは大変なことですが、子どもを「あずける・あずかる」だけの関係ではなくすことができるとも言えます。子どもたちの居場所を心地よいものにするには、全員が力を出さなくてはなりません。「住民立共同保育所」という場で「自分たちの子は自分たちの手で」育てる、「官」ではなく「民」としての公共を市民の側から提起する市民活動(NPO)です。

3.思春期を見据える子育て

 保育園と学童があるわらしべでは、0歳から12歳まで見続けてきました。さらに、子育て支援や思春期カウンセリングを行い、しょうがい児も多く育てる中で、「○歳で何ができる」といった断片的な発達の見方でなく、「発達の連続性は、その子の中の内在されたエネルギーが充実した時に、次の段階にいく」ということに気付きました。「環境を整えて、次に行く瞬間を待ってあげる」ことは、子育ての楽しさそのものです。子ども時代が楽しい、気持ちいいということが記憶の奥底にしまいこまれていることが、大人になってからの宝ものとなると思っています。保育園等が社福に入り、プレーパーク事業他のみとなった今でも、子育ては思春期を見据えてするべきだと考えています。

4.身体の内外の自然を大切にする

 人間は、動物としての脳(自律神経)の上に文化性を司る脳を乗せて進化してきました。外で身体を動かし遊ぶ経験の多さや生活リズムを整えることが動物としての脳を育てることであり、毎日が楽しいと思える人間の土台づくりであり、それが身体の内側の自然だと子どもたちから教わりました。年長以上になると文化性も出てきて、様々な文化が保育内容に入れられますが、土台が出来上がらないのに上に乗せると子どもは辛くなります。子どもが思いっきり遊べる身体と遊ぶための環境を大事にすることが、大人の務めだと考えます。これはしょうがいの有無などに全く関係がないのです。どの子も育つのです。

5.子ども時代の原風景を「おもしろい」「楽しい」「気持ちいい」に

 「楽しい」「気持ちいい」に人生の一番最初に「おもしろい」「楽しい」「気持ちいい」といった肯定的な感情を原風景にした子は、その子のその後の人生が多少辛くても、人生を乗り越えて「おもしろい」に帰っていく可能性が高まると考えます。また、原風景に「おもしろい」「楽しい」「きもちいい」を持つ子はそんなに容易く命を落とさないであろうとも考えています。青少年犯罪や事件をみていると、人生や社会に対し肯定感を持っていない場合がとても多いです。遊びを極めることは、人生を極めることです。

6.自分のやりたいことは自分で実践し、みんなでつくる

 設立期 の人たちは 「どの子も入れる保育園が欲しい」と 作 ってきました。その後も、集まった人たち が寄り添い、思いをまとめ、 今のわらしべに発展してきました。大人も子どももまずは「何がしたいのか (ミッション 」を出し、みんなで作り上げていく ことが、わらしべの形につながります。だから、どんなふうになっていくかは わかりません。家族のようにみんなが寄り添い、一緒につくるコンパニオンシップです。 わらしべの別名は「腐っても~(し)たいの会」です。

7.「子ども時代を大切に」する社会の形成

 NPOとして「片手に運動、片手に事業」を続けてきたわらしべは、様々なことを様々な形で社会に発信してきました。一住民の思いが、多くの人の賛同を呼び、運動や事業に変化してきました。未来をつくる子どもたちが、健やかに人間性豊かに過ごせるような、子ども時代を大切にする社会の形成が最終の目標です。大事にされた子は、社会を大切に思うはずです。みんなの思いと行動が、子どもたちを大きく育てることでしょう。そのためには、声をあげて、行動していきましょう。